問答の寺 ラサ郊外のセラ寺 政府の監視対象 「通訳はできない」

チベットのラサ郊外にある「セラ寺」は「問答の寺」といわれ、チベット三大寺院のひとつ。山全体が寺院で散策コースを歩くだけで数時間かかる高野山のような僧院都市である。

重く低く響く読経

暗い部屋で読経に包まれると意識が遠のくような感覚になる

文化大革命前には8000人の僧侶が学んだが、2000年取材には800人の僧侶が在籍していた。ダライ・ラマ十四世ともにインドに亡命した僧侶も多く、インドにもセラ寺ができている。

 大集会殿。バター灯の微かな明かりとヤクのバターが燃える強烈な野生の香り、朗々とした読経が重く低く響く。体全体が浮いているような感覚になる。

読経の途中、休憩になると小僧たちがバター茶を配る

「僧侶が中国政府批判を口にしたら……」

 若い修行僧が多いセラ寺は中国政府の重要監視対象である。取材前日の夕方、チベット語の通訳を頼んでいた男から電話があった。「どうしても行けなくなった」という。

チベット郊外には文化大革命で廃寺となった寺院も多い。壁には当時のスローガンがそのまま残っていた

「僧侶たちが中国政府を批判する言葉を口にしたら、困る。通訳することはできない。だれが聞いているかもわからないし、ましてあなたは外国人。外国人にそんな説明をしたら、どうなるかわからない」

 通訳がいないことには取材にならない。セラ寺の取材許可は日時が指定されていた。「政府の許可証もあるし、常に持ち歩いています。通訳できないときにはしなくても構いません。大丈夫ですよ」となだめ、どうにか取材にこぎ着けた。セラ寺にいる間、通訳の傍らには中国人のガイド兼監視役がぴったりと寄り添っていた。

血気盛んな若い修行僧が多く、中国政府が厳しい警戒の目を向ける

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